インタビュー

DAIGO Beingカバーアルバム『Deing』オフィシャルインタビュー!!

──話題性も然る事ながら、クオリティーの非常に高い作品が完成しましたね。今回のカバーアルバムは、DAIGOさん自身から立ち上がった企画だったと聞きましたが?

DAIGO:Being所属のアーティストになって僕も11年になりましたけど、そもそも僕自身Beingの大先輩の皆さんの曲を聴き、歌ってきた世代なんですよ。中学、高校の頃、T-BOLANさん、WANDSさん、DEENさんと名前を挙げたら切りがないですけど、本当にBeingのアーティストさんの曲が大好きでした。そして、19才の頃には「Being音楽振興会(※現在は閉校)」のヴォイストレーニングにも通っていたので、レッスンでWANDSさんの曲を練習したりもしていたんです。だから必然的に「いつかカバーしてみたいな〜」という思いはずっとありました。そういう中で今年7月にソロデビュー15周年ライブをやった時、森友嵐士さん、大黒摩季さん、倉木麻衣さんといった名だたる先輩方にゲスト出演して頂くことが叶って一緒に歌わせて頂いた時にすごく絆が深まったというか、Beingの先輩後輩なんだけどまるで仲間みたいに接して頂いて、「もしかしてカバーをさせて頂くちょうどいいタイミングなのかもしれない。」と思ったんですよね。コラボをやってみて自分の感覚として。しかも今年Beingが設立40周年、そして僕も40才。これはある意味運命なんじゃないかと!このタイミングしかないと思ったんです。それで僕から社長へ直接お願いしたら、「いいね!」とおっしゃって頂けて。そこからプロジェクトが立ち上がっていきました。

──15周年ライブ直後の出来事ですか?

DAIGO:そうです。それで、もしやれることになったらタイトルだけは、“Beingの曲をDAIGOが歌うから、頭文字のBをDに変えて『Deing』(ディーイング)”と初めから決めていました。

──収録曲はどのように決まっていったんですか?

DAIGO:選曲は難航しました。そもそも各アーティストそれぞれに名曲や代表曲が多いので、アーティストごと単体でカバーアルバムが作れてしまうくらい歌いたい曲が沢山あって。これはもうネットで物件探す時みたいに条件を作って絞っていかないと無理だなってことになったんです。そこでまずは各アーティストそれぞれ1曲にしようと決めて、次に自分の思い入れのある曲や、直感で歌いたいなって曲をピックアップしてスタッフさんとも色々ディスカッションを重ねました。また、当時Being作品を全てプロデュースされていた長戸大幸さんの承諾をまずは得なければという事でお話させて頂いた所、何と自らサウンドプロデュースを引き受けてくださる事になったんです。90年代、あのビーイングブームを生み出した日本が誇るスーパーヒットメーカーの長戸大幸さんがサウンドプロデュースをしてくださるなんて、聞いた時にはめちゃくちゃワクワクしました!

──長戸大幸プロデューサーとDAIGOさんのご関係は?

DAIGO:そもそも僕がBeingに入れたきっかけは長戸さんだったんです。知り合いの方にご紹介頂いて、Beingのスタッフの誰よりも先に会ったのが長戸さんでした。長戸さんのおかげでBREAKERZを結成することもできて本当に感謝しているんですけど、いつかガッツリプロデュースして頂いて一緒に作品を作ってみたいと思っていたんです。

──しかも今回は全曲に於いて、長戸プロデューサーが鶴澤夢人さんと共にアレンジも担当されていらっしゃいますよね。全曲ご自身によって手掛けられるという所からも、相当な力の入れようというのが伝わってきました。

DAIGO:衝撃的ですよね。だから僕は今回自分の中で、長戸さんが言われる事を全部やろうと決めていたし、全て委ねようというスタンスでいました。アレンジも全てお任せしたし、曲順も決めて頂きました。ヴォーカルディレクションも、「ここもう少しストレートに歌って欲しいな」って言われた所は、「わかりました!」とすぐ再トライする形でやっていましたね。何たって自分が大好きだったあの名曲達を生み出してきたご本人なわけですから、そこに対して僕は信じてついていきたいなっていう、真摯な思いで制作に臨んでいました。

──BREAKERZやこれまでのDAIGOソロでは作詞作曲、プロデュースもご自身で行われている訳ですが、今回はカバーですし、サウンドプロデュースも委ねられたということで、よりヴォーカルに集中できたのではないですか?

DAIGO:それはありましたね。でも時間がなくて、1日に3曲歌ったことも2日くらいありましたけど(笑)。最終的には自分じゃ選ばないテイクが選ばれたりもしていて新鮮でしたけど、それによってまた新しいDAIGOを引き出してもらえたかなって。自分の中で気が付かないクセとかもあったりして、そういう部分ではすごく勉強にもなりました。

──歌声、歌い方から原曲への深いリスペクトを感じましたが、その辺りは意識されましたか?

DAIGO:歌に関してはやっぱりイズムが自然と継承されいてる部分があるんですよ。影響を受けているんで自ずと出ちゃいますよね。だけどそれさえも僕の中ではオマージュであり、いいものを盗むという感覚で、そこは堂々とやりたいと思いました。実は今回長戸さんから歌い方をちょっと変えて欲しい。もっとストレートに、フラットに。」とリクエストされたんです。それに対しては最初はちょっと戸惑う部分も正直あったんですけど、逆に面白かったし、Beingのカバーをやるにあたっての一番いい歌い方を求めているんだろうなと解釈して、「挑戦してみます!」と。でも曲によっては、この歌い方だからこそこの曲は響くという自分自身のその曲へのオマージュが自然と滲み出ちゃった箇所もあるのかなと思いますね。

──確かに今回は太くストレートな発声の仕方が新鮮でした。「もっと強く君を抱きしめたなら」等は特にそれを感じましたが、何よりも強く印象に残ったのは原曲へのリスペクトでした。譜割りも忠実に再現されていたり、メロディへの感情の乗せ方だったり、オリジナリティーとオマージュのバランス感覚が絶妙だなと。

DAIGO:ありがとうございます。そもそも今回はT-BOLANの森友嵐士さん、大黒摩季さん、DEENの池森秀一さんといったレジェンドが参加してくださっていて、それに対する感謝の気持ちも強く表れていますね。長戸さんと打ち合わせしている時に、「せっかくだから本人にコーラスやってもらっちゃおうか。」ってその場でご本人達に電話してくれたんです。御三方共その場で「やります!」って言ってくださって、そこにもBeingの絆を感じました。本来マネージャーさん経由でとか色々筋通さなきゃとかあると思うんですけど、「長戸さんが言うなら」ってすぐ快諾してくださって。皆さん歴史があり、信頼関係で繋がっているんだなっていうのも強く感じましたね。

──DAIGOさん自身、森友さんと大黒さんは7月の15周年ライブでコラボされていますが、池森さんとは交流があったんですか?

DAIGO:なかったんですよ。コーラスを依頼する電話の際に電話を代わって「初めまして」って挨拶したのが初めてで。ただ実はBeing音楽振興会のヴォイストレーニングの受付で遠目から見ているんですよ。僕が19歳の頃。だから21年前ですよ。そういう場で一方的に見ていた方とこうやって電話で話したり、ラジオ収録の際に実際お会いできて、本当に続けて来て良かったなと思う瞬間でしたよね。

──池森さんとは今回の作品についてどんなお話をされたんですか?

DAIGO:皆さんそうなんですけど、「大丈夫だった? 俺コーラスって聞いていたんだけど、とりあえず一回フルで歌って欲しいって言われて歌ったんだけど。」って。僕もてっきりコーラスで参加して頂くって思っていたんですけど、上がってきた「このまま君だけを奪い去りたい」のミックスを聴いたら、Aメロの途中から明らかに違う人の声が流れてきて「これ池森さんだ!」って。要するにデュエットになっていたんですよ。その発想もすごいと思いました。もともとデュエットじゃない曲をデュエットソングとして新しくこの時代に生まれ変わらす発想がすごいなと。僕としては「大丈夫だった?」どころか大興奮で。ご本人と一緒に歌えるなんてこんな幸せなことはないと。池森さんとも話していたんですけど、Being世代の皆さんだったり、新橋で呑んでいるサラリーマンの皆さんだったり、デュエットソングとして生まれ変わったこの曲を皆さんにも是非歌って欲しいなと思いますね。

──森友さんとの「離したくはない」はとても情感に溢れた歌声でぐっと来ました。

DAIGO:「離したくはない」も物凄く好きで昔からよく歌っていました。これもデュエットソングになっているんですけど、やっぱりどこかしらに森友さんイズムがあるので、自然と森友さんらしい雰囲気に自分もなっている部分があるんですけど、やっぱり本家は違いますよね。森友さんの歌声の強さ、ああいうオンリーワンなヴォーカルに憧れるんですよね。僕もある意味まだまだ薄いなって。そういう部分でもすごく勉強になりました。

──まさに「Deing=存在し続けていく」という意味合いも含まれるタイトルとリンクして、ヴォーカリストDAIGOさんにとっても色々影響を受ける大事な作品になったのではないでしょうか。

DAIGO:はい。あと大黒摩季さんも15周年ライブにもご出演頂いたんですけど色々教わることが多かったです。今回はご自身の曲で、ご自身のコーラスアレンジで歌ってくださいました。大黒さんはいつも「また何かあったら言ってね」って気さくに言ってくださるんですよ。本当に「付いて行きたくなる姉さん」って存在で、人柄的にもリスペクトしています。

──「あなただけ見つめてる」は今作の中では最も斬新な仕上がりになっていますね。

DAIGO:そうですね。この曲は「スラムダンク」のエンディングテーマとしても有名な曲ですけど、2018年新たに生まれ変わったアレンジ、大黒さんとのヴォーカル・コラボレーション、doaの徳永暁人さんもコーラスに参加してくださったりと、聴き所満載なので楽しんで頂けたらと思います。

──他の曲でも、今回コーラスがふんだんに入っている所も特徴的かなと。BREAKERZさんの曲で特に女性コーラスが入っている曲ってほとんどないですからすごく新鮮でした。

DAIGO:そう!本当にコーラスも90年代のビーイングサウンドに於いて大事だったんだなって改めて思いましたよね。ハーモニーの大切さを感じました。

──今回男性コーラスでは灰原大介さん、女性コーラスでは図画泉美さんといった若手の貢献も目を引きました。また「Secret of my heart」にはジャズシンガーの森川七月さんがコーラス参加していたり、他にも色々な方がコーラスに参加されていますね。

DAIGO:コーラスもそうですし、森丘直樹さんを始めとした若手ギタリストの方々など沢山のミュージシャンが参加してくださいました。実際お会いしたことがない人もいるんですけど、長戸さんを中心に音で繋がっている、Beingが生み出してきた楽曲で繋がっている、新しい絆が生まれたなって感じがしますね。CDには特設サイトに乗せているライナーに加えて、アルバム制作に関する秘話やDAIGOがBREAKERZを結成するに至ったエピソードなども紹介したライナーノーツを封入しているのでそちらもチェックして頂きたいです。

──他に制作過程の中で印象深いエピソードはありますか?

DAIGO:Beingを語る上で欠かせない、Beingの宝物のような方、ZARDさんの「永遠」を歌うことができたのも、僕にとって特別に光栄なことでした。

──ZARDの曲の中で、何故この曲が選ばれたんですか?

DAIGO:「負けないで」とか「揺れる想い」とか色々あるんですけど、すごくこの曲を歌いたかったんですよね。とてもいい曲だし、「永遠」というタイトルが付いたこの曲が、今歌うことによって違った意味を感じられる楽曲になるんじゃないかと思ったので選ばせて頂きました。もちろん「負けないで」は24時間マラソンで勇気付けてもらった思い入れの強い曲だし、「Don’t you see!」とかも好きなんですけど、色々考えて最終的にこの曲を歌わせて頂きました。

──とても雄大な男性的なサウンドに生まれ変わっていますね。ZARDの坂井泉水さんはリズムに対して少し後ろめ、重ために歌う特徴がありますが、その辺りは意識されましたか?

DAIGO:僕は逆にこういうスローな曲だと多少走り気味になっちゃうんですよ。感情が先走っちゃうっていう部分があるので、そこは注意しました。この曲の重みだったり、歌詞に刻み込まれた想いを感じながら、大切に歌っていきましたね。カバーするにあたって改めて全曲聴くじゃないですか。そうすると「あっ正式にはこういう譜割りだったのか」とか、「結構この入り方難解なんだな」とか、細かく気づく事も沢山あって。各ヴォーカリストさんの個性もありますけど、そこも色々勉強になりました。

──先程「もっと強く君を抱きしめたなら」はいつもと発声の仕方が違う感じを受けたとお話しましたが、これは大阪のスタジオでレコーディングされたそうですね。

DAIGO:はい。長戸さんもスタジオに来て頂いて、原曲のディレクターでもあった寺尾広さんにディレクションして頂きました。やっぱり環境や機材やマイク等も違うから手こずってはいるんですけど、OKテイクが録れたら次に進むって感じで、歌い込むというやり方はしなかったですね。自分的には正直不安も多少あったんですけど、そこはオリジナルをやられている方々に全て委ねて進めて頂きました。 WANDSさん繋がりではもう1曲「世界中の誰よりきっと」ですね。オリジナルは中山美穂さんとWANDSさんのコラボでWANDSさんがハモりを歌っていましたが、後にWANDSさんもセルフカバーされてそっちのヴァージョンも聴いていたので、自分なりにどう歌えるかなって色々考えながらレコーディングしていきました。

──「世界中の誰よりきっと」はアルバムの中で一番オリジナルに近いアレンジかなと感じました。DAIGOさんの声とも相性がいいですね。

DAIGO:この曲もそうですし、全曲にわたって聴いてくださった方から「DAIGO 君に合ってるね!」って言われることが多いんですよ。スタッフさんも含めて。それはすごく嬉しいお言葉ですね。

──「君が欲しくてたまらない」「甘い Kiss Kiss」は、DAIGOさんのオリジナルかと思ってしまうくらいすごくマッチしていると思いました。

DAIGO:言ってしまえば今回収録の男性ヴォーカリストの曲はどれも大好きで歌いまくってたんですよ。「突然」も「君が欲しくてたまらない」も「甘い Kiss Kiss」も。REVさんなんて出口さんのバンダナもマネするくらいカッコいいなと思っていたんで、カバーできて感激ですよね。だけど「甘い Kiss Kiss」はあの印象的なイントロからAメロへの転調が何度やっても難しくて。今回キーを半音上げたんですけど、途中歌ってて上げなきゃ良かったとちょっと後悔しました(笑)。「Secret of my heart」もすごくいい曲だし大好きなんですけど、あの曲めちゃくちゃ難しいんですよ。もう二度とできないんじゃないかと思うくらいの奇跡のワンテイクになっているので、是非聴いてください。

──「果てしない夢を」はエンディングを飾るのにふさわしい豪華な仕上がりですね。

DAIGO:当時、日本テレビの野球中継番組のイメージソングだったんですけど、長嶋さんが歌われている事でも話題になり、僕は巨人ファンだし、大好きな曲でした。最初、「この曲は1人で完結できる曲じゃないから今回の収録どうかな」って話していたんですけど、レジェンドの御三方が参加してくださることになって、ギザのコーラスの方々も一緒になって、新しい21世紀版「果てしない夢を」がパッケージできたんじゃないかなって思っています。

──それぞれの声の特性を生かしたパートが使われていますよね。

DAIGO:そうですね。そういうエディットもさすがだなって思いましたね。この曲で最後元気になって明日からも頑張ろう!って思えるようなアルバムになったかなと思います。そういう曲順のチョイスもね、例えば「世界中の誰よりきっと」が1曲目で、「あっ、ここから行くか〜!」って。ここでまず掴んでみたいなね。それで最後は「果てしない夢を」で熱く締め括るって、そういう発想に驚かされるというか、全てに対してすごいと思いましたよね。

──全体的にアレンジに関してはいががでしたか?

DAIGO:原曲のいい所を残しつつ、リズムパターンを変えたり、現代の音として再構築されているなと思いましたね。改めてそういう音作りに関する豊富な知識やアイデアに対してもすごいと思いました。世の中には変わり過ぎててがっかりするカバーってあるじゃないですか。今作はそういう感じは全くしないのに、でも新しい。本当に絶妙なアレンジをされているなって感じました。

──原曲を知らない世代のリスナーもいるでしょうし、また当時そんなに興味のなかった曲でも今作を聴いて、「この曲、こんなにいい曲だったんだ〜」と再評価する方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういう意味でも価値のある作品ですよね。

DAIGO:確かにこの作品を聴いて初めて知る世代の方もいると思うし、懐かしいなってまたオリジナルを聴き返してくれる方もいるだろうし、Beingが40周年で僕も40才で純粋に何か盛り上げたいって気持ちもあって作ったアルバムなので、そうなってくれたら嬉しいですね。そもそもはただ僕が歌いたかったって所からは始まってはいるんですけど、制作していく中で改めて名曲のパワーを感じましたし、もっとBeingの音楽を伝えていきたいという想いがより高まっていった部分はありますね。それにスタッフ達も、Beingに所属しているだけあってやっぱりBeingの曲が好きなんでしょうね。自ずと盛り上がる感じがあって、それこそ「ジャケ写どうする? MVどうする?」「やっぱオマージュしようよ。今回のテーマは“This is Being”でいきたいね!」なんて感じで、色々みんなで楽しみながら一体となって作業することができたのもすごく嬉しかったです。

──制作現場が自ずと盛り上がる! まさに昔ながらの音楽制作工房「Being」の姿ですね。では最後に12月開催のライブツアーはどんな内容になりそうですか?

DAIGO:ツアータイトルにも堂々と掲げているようにこのアルバムを披露するためのツアーなので、このアルバムの曲しかやらないかもっていうくらいの潔さで今は考えていますけど、まだ詳しい所は未定です。僕のライブに来たことがないっていう人も、是非この楽曲たちを聴きに遊びにきて欲しいなと思いますね。

(Text by 松原由香里 from music freak magazine編集部)